受験勉強
高校を中退してからは、学校に行くというプレッシャーからも解放され、自分のペースで勉強させてもらっていました。多少時間の管理がルーズだったかもしれませんでしたが、親からもあまりうるさく言われることもなく、のびのびとやらせてもらうことが出来ました。50歳を過ぎた今、集中力が続かず、本を読むのにも無残なほど時間がかかってしまうのですが、高校をやめてからは、朝の通学時間も気にすることなく、夢中になって本を読むことが出来ました。私は日本史が好きで、よく歴史小説を読んでいたのですが、十数巻の歴史小説を、一日一冊のペースで朝から晩までずっと読み続け、それを一週間近く続けたことがあります。頭がクラクラするほど興奮しながら本に夢中になることが出来ました。あまりまとまった時間もなく、そして集中力も続かなくなってしまった現在では、もうそんなことは出来ませんが、今から思えば、若かったからこそ出来た、とても贅沢で貴重な時間を過ごすことが出来たと思います。
もちろん大学受験のための勉強はしていたとは思いますが、このように時間をあまり気にせずに、色々な本を読むことが出来たのではなかったかと思います。そんな中、『砂漠化する地球』という講談社のブルーバックスから出版されていた本に出会ったのでした。なぜ私がこのような本を読む気になったのか、正直覚えていません。でも、高校に在学していたときから医学部への進学を諦めて農学部を志望するようになっていたので、もともと生態系や環境といった方面には興味があったのだろうと思います。この本を読むことによって、進行しつつあった地球の砂漠化がさらに深刻化してしまうことの影響に目を向けさせられたのでした。環境問題にもいろいろあったとは思いますが、この本を読んで以降、地球の砂漠化という環境問題に興味を持ち、砂漠の緑化について大学で勉強したいと思うようになりました。
先ほども述べましたが、高校に入学し、厳しかった親の元を離れて寮での団体生活を始めたことで自分を見失ってしまい、全く勉強しなかったので、学校の授業にはすっかり置いていかれてしまっていました。特に数学と英語は苦手意識が定着してしまい、入試が近づいてくるにしたがって、それは焦りとなってしまっていました。高校にいたときには、周りのクラスメイトたちはよく、英単語を通学時間に覚えたりしていました。私は英語が苦手で、特に英単語はほとんど覚えたことがありませんでした。英単語を休み時間に覚えているような、真面目な生徒もいたので、どうすれば単語を覚えられるのか、彼らに尋ねたことがあります。彼らの答えは、「単語はもうやるしかないよ」というものでした。どうやって覚えるかといった要領が重要なのではなく、何にせよ覚えようと努力することが大事なのだということなのだろうと思います。当たり前のことなのですが、3年後に大学の入学試験があるとして、3年前から入試の準備を始めることができたならば、1日に10個ずつ単語を覚えることができれば試験の日までには10000個単語を覚えることができるはずです。1日に10個ずつだとすれば、それはあまり大きな負荷ではないと思います。しかし、試験の1年前からはじめたとすると、同じだけ覚えるには毎日30個ずつ覚えなければならず、3ヶ月前からはじめたのであれば、毎日100個ずつ覚えなければならなくなります。私は要領のいい覚え方をなんとか探し出そうとして、残念ながらそれを見つけることができず、気がついたときには、結局毎日200個くらいずつ覚えなければならなくなってしまっていました。もうそうなってしまうと無理なだけですし、あとは焦りしかなくなってしまいます。「学問に王道なし」という故事成語がありますが、そのことをまさに思い知らされることになりました。私が塾で教えていた生徒が高校に進学するときには、高校に入学して嬉しくて遊びたい気持ちはわかるのですが、私の失敗を繰り返させたくなかったので、とにかく最初の半年間は学校の授業にかじりついてでもついていくようにと伝えておきました。